親族以外への承継が難しい3つの理由

 もっとも、子どもに承継させることができないからといって簡単に親族以外に承継できるかというと、ことはそう単純ではない。中小企業においては主に3つの理由で、親族以外への承継は容易ではない。

 第1に、子ども以外の後継者候補を探すことが難しい。

 まず候補として挙がるのは従業員だが、規模が特に小さい企業では、家族以外の従業員がいなかったり、いたとしても経営者と同年代であったりするなど、後継者として適当な従業員がいないことが多々ある。

 第2に、候補となる従業員がいたとしても、事業の承継を承諾してくれるとは限らない。

 事業を承継するなら、もうかっている事業を継ぎたいと思うのは自然なことであり、好んで赤字の企業を継ぎたいとは思わない。経営者の子どもであれば、家業としての思いや従業員への責任などから、赤字でも承継することがある。

 しかし、親族以外の場合は、業績が良かったり何らかの強みがなかったりしなければ、承継を承諾してもらうのは難しいだろう。事業の売却や譲渡などの第三者への承継も事情は同じである。

 第3に、事業の承継を承諾してくれても、親族以外の後継者候補は実際の承継までに乗り越えなければならない問題がある。

 株式や事業用資産の買い取りはその典型といえる。相続や贈与という方法で株式や事業用資産の譲り受けが可能な子どもと違い、親族以外の後継者は買い取るための資金を用意しなければならない。その負担が重いことで承継を諦めるケースもみられる。