(宇山 卓栄:著作家)
焦点は最高指導者ハメネイ師の後継者が誰になるか
イラン北西部の東アゼルバイジャン州で19日、ヘリコプターが墜落し、ライシ大統領やアブドラヒアン外相ら搭乗者全員が死亡しました。ライシ大統領に加え、アブドラヒアン外相がいなくなったことはイランの体制にとっては少なからず影響があります。
アブドラヒアン外相はロシアとの関係を深め、イランのBRICS加盟を実現させた実務の取り仕切り役でした。また、中国との関係を深め、中国の仲介により、2023年のイランとサウジアラビア外交関係正常化を果たしました。活発な外交関係の構築に大きな功績があったのです。
そして、レバノンのヒズボラとの関係を、イスラム革命防衛隊との連携により強化しました。以前、ヒズボラなどのイラン別動勢力である「抵抗戦線」の支援連携を、革命防衛隊が単独で前のめりになって推進していましたが、アブドラヒアン外相が革命防衛隊とともに、支援連携を推進し、イランの政権そのものが「抵抗戦線」の支援連携に積極関与するようになったのです。同外相は革命防衛隊と政権をつなぐ連絡役の要でした。
墜落事故を受け、次期大統領選挙は6月28日に行うと発表されています。注目されるのは、次期大統領に誰がなるかということ以上に、最高指導者のハメネイ師の後継者が誰になるのかということです。
これまで、次期最高指導者はハメネイ師直系の腹心ライシ大統領であると目されてきましたが、死去によって後継体制が見えなくなっているのです。