(写真:AP/アフロ)

 米アップルが、音声アシスタント「Siri(シリ)」を改良し、競合の生成AI(人工知能)サービスに対抗する構えだと米ニューヨーク・タイムズ(NYT)が報じている。米国時間2024年6月10日に開催する自社年次イベント「世界開発者会議(WWDC)」では、会話機能を強化した汎用性の高いSiriを発表し、AI開発の成果を披露する予定だと関係者は話している。

ChatGPTと直接対抗せず

 NYTによると、アップルの当面の戦略は、米オープンAIの「Chat(チャット)GPT」のような文章を書くチャットボットをリリースして直接対抗することではないという。タイマー設定やカレンダーへの予定登録、買い物リストへの商品の追加など、Siriがこれまでに提供してきたタスクをより簡便に使いこなせるよう力を注いでいる。テキストメッセージを要約することも可能になると関係者は話す。

 米オープンAIがChatGPTを公開して以来、アップルは脚光を浴びるこれら対話型生成AIサービスに脅威を感じるようになった。ソフトウエアエンジニアリング担当上級副社長のクレイグ・フェデリギ氏とマシンラーニングおよびAI戦略担当上級副社長のジョン・ジャナンドレア氏は23年、ChatGPTを数週間にわたってテストし、詩を書いたり、コンピューターコードを作成したり、複雑な質問に答えたりできるこのサービスよって、Siriがすでに時代遅れになったと認識した。

 かねてアップル製品にはAI関連の機能やサービスが不足していると指摘されていた。同社は11年に発売したスマートフォン「iPhone 4S」にSiriを導入した。当時は世界中の注目を集めたが、最近は大きな進展が見られないと指摘されている。

 ChatGPTのような新技術がSiriを追い抜いたという認識は、同社に過去10年で最大の組織再編を実施するきっかけをもたらした。同社はそれまでに100億ドル(約1兆5600億円)を投じて電気自動車(EV)「Apple Car」プロジェクトを進めてきたが、計画を中止し数百人の技術者をAI開発に振り向けた。