(写真:ロイター/アフロ)

 米アップルが、米グーグルの生成AI(人工知能)モデル「Gemini(ジェミニ)」をスマートフォン「iPhone」に組み込む交渉を進めていると、米ブルームバーグ通信が報じた。

 事情に詳しい人物の話によると、両社は現在、アップルが2024年にリリースする予定のiPhone向けオペレーティングシステム(OS)「iOS 18」にGeminiを搭載すべく、ライセンス契約について活発に交渉を進めている。アップルは対話型AI「ChatGPT(チャットGPT)」を手がける米オープンAI(OpenAI)とも協議しているとブルームバーグは報じている。

グーグル、AIでもiPhoneユーザー獲得か

 グーグルとの提携が成立すれば、Geminiは世界中のiPhone利用者から数十億人規模を自社ユーザーとして取り込み、生成AI市場で優位に立てる。アップルは、23年10~12月期の決算決算発表で、iPhoneやパソコン「Mac」、タブレット端末「iPad」、腕時計型端末「Apple Watch」など世界で稼働中の同社製機器(アクティブデバイス)の数が、22億台を超えたと明らかにした。今後これらの機器にGeminiが搭載されるようになれば、グーグルのAI開発にとって大きな追い風になる。

 一方、今回のグーグルとの交渉は、アップルのAI開発が当初の期待ほど進んでいないことを示すともいわれている。ブルームバーグ通信は23年7月、アップルが自社の大規模言語モデル(LLM)開発に向け、独自フレームワーク「Ajax(エイジャックス)を構築したと報じていた。アップルのエンジニアはこの基盤を用いて、「Apple GPT」と呼ばれる対話AIサービスを構築し社内でテストしていた。だが、今回の報道によると、アップルの技術は依然としてグーグルなどに比べて劣っており、提携がより良い選択肢だと考えられている。

 アップルは次期OSであるiOS 18に独自のAIモデルをベースとした新機能を搭載する準備を進めている。しかし、それらの機能強化は、クラウド経由で提供されるものではなく、アップル製デバイス上で動作するものになる。そこで同社は、画像を生成したり、プロンプトに基づきエッセイを書いたりする機能など、生成AIの「重労働」部分を担うパートナー企業を探している。