チェック・アンド・バランスが必要だ

 しかし大きな政府は官僚主義の落とし穴に陥る危険性もある。「私が社会民主主義に求めることは、政府に大きな役割を担わせるために、政府や社会により広範なチェック・アンド・バランスのシステムが必要だということだ」とスティグリッツ氏は強調する。

 イスラエルの報復攻撃によりパレスチナ自治区ガザで死者が3万4000人を超えた悲劇に抗議するコロンビア大学の学生が警官隊に排除されたことについて、スティグリッツ氏は「多くの問題が提起されているが、そのうちの1つは明らかに学問の自由の問題だ」と指摘する。

「多くの政治家、特に共和党の政治家は長年にわたって大学に“戦争”を仕掛けてきた。彼らは、私たちが学生にもう少し自分の頭で考えることを教えるのが気に入らないのだ。米国の強さの源はスタンフォードやハーバード、コロンビアといった大学から生み出されるテクノロジーや研究だ」(同)

「学問の自由に対する干渉であり、1940~50年代に赤狩りを進めた下院非米活動委員会以来見られなかったことだ。われわれのシステムが機能するにはチェック・アンド・バランスが必要だ。その1つが学問の自由であり、独立した大学が政府の行動を監視し、批判することなのだ」とスティグリッツ氏は力を込めた。