――妻も太鼓判を押すほど緻密な性格の彼が設計した橋が、あのような形で崩落してしまいました。ドラマ内では正しい部材が使われていなかったという事実も明らかになったようですが。

吉川:ドラマ後半で、狩山と磯田社長(小日向文世)が橋崩落の原因を話し合うシーンがありましたね。警察は橋の設計変更が原因と考えているが、狩山は「上部工ケーブルの変更発注書」をスクリーンに映し出し、強度が元の半分以下の海外製ケーブルが使われたことが原因であると主張しています。確かにそれが原因の可能性があるでしょう。

 今回の落橋シーンでは、差し替えられたと思われるケーブルが定着から外れ、桁の自重を支えきれなくなっています。最終的には桁の中央部(曲げモーメント最大箇所)で折れ曲がって橋は崩れ落ちてしまっています。

 ただ現実的には、設計ミスや手抜き工事(仕様を満たさない材料使用)があったとしてもただちに崩壊することはなく、弱いところから少しずつ壊れ、やがて落橋に至るという感じでしょうか。

注目ポイント
画面に映し出された変更発注書には、「φ7×73、length7991」といった文字が並んでいた。これは、問題となった吊ケーブルが「直径7mmの鋼材が73本で束になっていて、長さが7991mm」という意味。

 あと、細かいことですが、狩山部長のヘルメットの紐が外れていたのが気になりました。実際の現場ではあり得ないことなので。

――そこにはまったく気が付きませんでした! 確かにストライキをしている坂東組に工事再開の交渉に行くときは紐が外れていました。その後、すぐにヘルメットを脱ぐので演出の都合だったのかもしれないですね。実際の橋で安全ベルトを着けて作業するシーンではしっかり紐は止められていました。