納税の義務がある日本では、政治に不満を持つ人も税金を納めなければならない。収入を過少申告して脱税が判明すれば、多額の追徴金が課せられる。
ただし、例外的に優遇されているのが政治家だ。政治家は裏金を作っていたことがバレても、あとから政治資金収支報告書を訂正すれば許される。日付も金額も「不明」でいい。政治資金は非課税だから、多額の資金を無税で移動したり相続できたりする。
もしこれが「不公平」だと思うなら、選挙に行って意思表示をしたほうがいい。選挙に行かなければ、あなたの意見は政治に届かない。選挙に行くことをやめた先に待っているのは「誰かが決めたことの責任を自分も引き受けなければならない世界」だ。
多くの人はあまり意識していないが、選挙で政治家選びに失敗すれば、任期中に政治家を取り替えることは難しい。
たしかに制度としては、都道府県知事、市町村長、地方議会、地方議員に対する解職請求制度が存在する。しかし、国会議員にはリコール制度自体が存在しない。また、実際の解職請求には大変な手続きが必要だ。まずは1〜2カ月の間に「選挙人名簿登録者数の3分の1以上の署名」などの条件をクリアしなければならない。署名を集めた後には、住民投票で有効投票総数の過半数の賛成を得る必要がある。
すべてがお膳立てされた通常の選挙にも行かない人たちが多いことを考えると、解職請求のハードルは高い。解職が成立すれば政治家は失職するが、その後には新たな政治家を選ぶ必要がある。しかも、次の選挙に「いい候補者」が出てくる保証はどこにもない。だから選挙の機会を大切にして、政治家を慎重に選ぶことが大切なのだ。
「多様な社会に対応できない」政治家を生み出すもの
私は選挙取材の現場で、選挙に行く人、行かない人、いろんな人たちから話を聞いてきた。候補者に限定しても、軽く2000人以上は会っている。しかし、多くの人に会って話をすればするほど「選挙が大好きな自分の常識は世間の非常識」だと思い知らされる。それくらい世の中には多様な人たちが生きている。
今、選挙に興味を持つ一般の人は驚くほど少ない。選挙に関する知識の量も乏しい。それどころか、「民主主義の基本」を理解していない人が世の中にはたくさんいる。そのため選挙は「限られた人たち」しか参加しないイベントになっている。
政治家が「確実に選挙に参加する人たちの方」を向いてしまう状況は、選挙に行かない有権者が作り出していると言ってもいい。そもそも自分たちの要望を政治家に届ける人が限られているのだから、政治家が多様な社会の要求に応えられないのは当然だ。日本では、政治家と有権者のコミュニケーションが圧倒的に不足している。問い合わせの窓口すら公開していない政治家が上位当選してしまうような世界なのだ。
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