3月8日、参院の政治倫理審査会は、自民党も含め全会一致で、裏金作りがあったとされる32人の議員を審査対象にすることを決めた。安倍派に所属した世耕弘成氏(前参院幹事長)、橋本聖子氏(前参院議員会長)、西田昌司氏(元参院国会対策委員長代行)などは出席の意向を語っているが、残りの29人は出席を希望していない。
衆院の政治倫理審査会には安倍派と二階派の幹部5人が出席したが、共同通信が行った世論調査では、91.4%が「説明責任を果たしていない」と回答した。政治改革が主要なテーマとなっている今国会で、現実的に改正すべきポイントはどこにあるのか。野党はいかなる方法で追及していくべきなのか。野党共闘による政権交代を考え続けてきた法政大学法学部教授の山口二郎氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)
──政治改革をめぐる議論が国会で続いていますが、政治資金収支報告書の未記載がそもそもの問題であり、話が様々なテーマへ広がることに違和感を覚えるという声もあります。野党はどこまでテーマを広げて、政権与党を追及していくべきだと思われますか。
山口二郎氏(以下、山口):段階を区切りながらテーマを設定して、追及していく必要があります。この通常国会の間に法改正を目指すのであれば、実現可能性を考えなければなりません。会期は6月23日まであります。予算を通したので衆議院では少し余裕ができましたが、法改正をするとすれば、圧倒的多数の与党も含めて合意を図る必要があります。
自民党の政治家は強い批判にさらされているので、ある程度は野党や世論の要求に応えないわけにはいきません。野党からすれば、法改正がしやすい状況です。
政治資金規正法の効き目が強い部分から改正していくことがまず当面の目標だと思います。
政治資金収支報告書を完全にデジタル化して、エクセルのような形式でまとめ、データとして総務省に報告し、それをオンラインで公開する。誰でもそのデータを入手できるようにする。いつからいつまで、誰が誰から、どれだけの献金を受けているのか、容易に名寄せできるようにする必要があります。
──「連座制の強化」もしばしば議論にあがります。
山口:「連座制の強化」は取扱注意です。不正なカネの動きがあったときに、秘書や会計担当者に責任をかぶせて、政治家が知らぬふりをすることが許せないという気持ちには私も同感します。しかし問題は、連座制を強化すると、検察の出番が大幅に増えることが想像される。つまり、検察がすごく強い権力を握るのです。
議員を立件するかどうかは、検察が大きな裁量を持っています。検察ファッショ(政治的意図に基づく検察の強権的捜査)という言葉も昔ありましたが、検察が政治家に対して権力的な介入をしていく可能性は常にある。検察や国税局にもっと厳しい取り締まりを求める声があり、気持ちはよく分かるのですが、あまり検察に頼り過ぎないほうがいいと私は思います。