- 全国人民代表大会(全人代)後の首相会見廃止というニュースが世界を駆け巡った。1988年以降、歴代首相が国内外のメディアに直接語る慣例が定着していたため、極めて異例と受け止められた。
- そもそも事前に質問者や質問事項が決められている「予定調和」の記者会見ではあるが、過去には記憶に残る名言も飛び出すなど、意義はあった。
- 李強首相の存在の軽さが改めて露呈した格好だが、記者会見を廃止させたと考えられる習近平国家主席にはどんな思惑があるのか。(JBpress)
(福島香織:ジャーナリスト)
3月4日から全国政治協商会議(全国政協)、5日から全国人民代表大会(全人代、人大)が開幕した。いわゆる「両会」(国会のようなもの)シーズンに突入した。
今年の両会は例年のように盛り上がっていない。中国国内でも事前報道はそんなに手厚くなかった。だが全人代についていえば、李強首相の初めての政府活動報告ということで、海外メディアはそれなりに注目していたと思う。
結果から言えば、李強の政府活動報告はほとんど新鮮味がなかった。重大戦略や安全能力建設のための特別国債発行を今年から数年にわたり行うという発表や、台湾問題に関して「和平統一のプロセス」という表現が「祖国統一の大事業推進」という表現に変わったことなど、細かく見ていけば、それなりの見出しが取れそうなニュースは結構あった。
だが、政府活動報告への関心も吹っ飛ぶニュースが、全人代開幕前日に発表されたので、そちらの方が今もチャイナウォッチャーたちの一番のトピックになっている。つまり全人代閉幕日に慣例として行われてきた首相の国内外記者会見の取り消しだ。
4日の全人代プレ記者会見で全人代スポークスマンの娄勤倹が、今期の全人代では首相の国内外記者会見を取り消すことを発表した。
娄勤倹によれば、理由は以下の通りだ。
「全人代新聞センターでは部長(閣僚)記者会見を増加した。外交、経済、民生などの問題については部長ルートの中国内外記者会見で記者の質問に応じ、政権側の政策に関する措置や社会が関心寄せる問題への解釈と説明を行う。このほか代表団の活動を記者に公開する代表ルート取材の方法で、中国内外記者により多くの取材の機会を提供したい」
「よって包括的に考えて、今年の全人代閉幕式後に首相記者会見は行わない。特殊な事情がない限り、今期の全人代後に首相記者会見は行われない」
この言い回しは、よくよく読めば、ずいぶん李強を馬鹿にした言い草だ。つまり李強の記者会見は、他の閣僚の記者会見で代行できる程度のもの、ということではないか。