(英エコノミスト誌 2024年2月24日号)
人工知能(AI)で復活するなどと期待してはいけない。
米国の巨大テクノロジー企業が我が世の春を謳歌している。
2022年にスランプを経験した後、アルファベット、アマゾン・ドット・コム、アップル、メタ、マイクロソフトの株価は人工知能(AI)ブームに乗って上昇し、5社の市場時価総額の合計は2023年の年初から70%増加して10兆ドルを突破した。
AIのおかげで時価総額が増え、業界の上位に躍り出た企業はほかにもある。AI向け半導体最大手のエヌビディアは2月21日、2023年11月~24年1月期の売上高が前年同期比265%増になったと発表した。
時価総額は1年前の約5000億ドルから1兆7000億ドルに膨らみ、米国で5番目に価値の高い企業になった。
「Chat(チャット)GPT」の開発元であるオープンAIや、アンスロピックをはじめとする他のAI開発会社も一躍有名になり、数十億ドルもの資金調達を成し遂げている。
AI狂騒曲の影でシリコンバレーに大きな異変
規模の小さなAI企業も何万社と誕生している。
その数があまりにおびただしいため、オンライン媒体「レスト・オブ・ワールド」によれば、「.ai」というインターネットドメイン名拡張子を持つ、カリブ海に浮かぶアンギラという小さな島は今、これをライセンス供与することで地元政府予算の約3分の1をまかなえる収入を得ている。
また、数年間赤字を続けた末に昨年11月に破産したシェアオフィス企業ウィーワークの創業者アダム・ニューマン氏が2月5日に同社を買い戻す意向を示したことは、シリコンバレーに狂気が戻ってきた最新のしるしだ。
しかし、米国のスタートアップ企業が以前見られた熱狂に再度包まれていくと考えるのは間違いだ。
まず、ニューマン氏の行動に対するウィーワークの経営陣と債権者の反応からは熱気が感じられない。
調査会社のピッチブックによれば、ベンチャーキャピタル(VC)会社が米国で昨年実行した投資は1700億ドルにすぎず、2021年の半分にとどまった。
オープンAIのような数少ない有名案件を除くと、投資家は企業価値の評価額が非常に高い案件への参加に特に慎重になっている。
米国では2010年代を通じてユニコーン(10億ドル超の価値があるとされる非公開企業)の数が急増した。
2021年にこの称号を新たに手にした企業は少なくとも344社あった。昨年の数字は45社だ。