(英エコノミスト誌 2024年2月17日号)
顧客、従業員、株主の3者を幸せにし続ける偉業
本誌エコノミストが「ビッグマック指数(BMI)」を提供し始めて40年近くになるが、その間に米マクドナルドが米国で提供するハンバーガー「ビッグマック」の価格は3倍以上になった。
一方、米国の超大型量販店チェーン、コストコが販売しているホットドッグとドリンクのセットの価格はこの間ずっと1ドル50セントに据え置かれている。
昨年には同社の店舗を訪れた顧客のうち2億人が、肉をたっぷりはさんだこの料理を堪能した。
コストコの最高財務責任者(CFO)を長年務めるリチャード・ガランティ氏はかつて、この価格を「永久に」凍結すると約束した。
コストコのファンが顧客だけではないことは、ガランティ氏が2月6日に引退を発表した後にウォール街のアナリストたちから同社に対する愛情がどっとあふれ出したことからも明らかだ。
ガランティ氏が40年近く前にCFOに就任して以来、大型株で構成されるS&P500種株価指数が25倍になったのに対し、コストコ株は430倍に跳ね上がっている。
ここ数年も市場全体をアウトパフォームし続けている。この長期にわたる成功の背景には、いったい何があるのか。
「傲慢なほどシンプル」な事業モデル、チャーリー・マンガーも絶賛
コストコは現在、ウォルマートとアマゾン・ドット・コムに次ぐ世界で3番目に大きな小売企業だ。
売上高はウォルマートの半分にも満たないが、資本利益率(ROC)は20%近くあり、ウォルマートの2倍を超える。
1997年から昨年死去するまでコストコの取締役会に名を連ねていた著名投資家のチャーリー・マンガー氏は「文句のつけようがないすごい会社」だと絶賛していた。
コストコのビジネスモデルを「傲慢なほど単純」と形容するガランティ氏は、同社はシンプルなアイデア――品質の高い製品を最も安い価格で提供することによって買い物客を魅了する――に沿って運営されていると述べている。
その秘訣は、定額の会費を顧客から受け取る一方で仕入れ原価への上乗せは小幅にとどめること、仕入れる商品の品目を絞り込むこと、そして従業員の働きに手厚く報いることにある。