社債の償還へ、公募増資や子会社株売却相次ぐ

「第4のキャリア」として携帯電話事業の拡大を進める楽天グループの目下の課題は資金の手当てです。当初予定していた携帯電話基地局の整備計画を前倒して進めたとし、大型の投資を社債の発行などで補ってきました。2024年から25年にかけて8000億円規模の社債の償還期限を迎えます。

 楽天グループは2024年1月に、同年11月に満期を迎える社債を対象に上限17億5000万ドル(約2580億円)の公開買い付けを実施することを発表しました。別途、満期3年の社債も発行し「社債償還スケジュールの平準化コントロールを目指す」(楽天グループ)としています。

楽天グループの三木谷会長兼社長は強気の姿勢を崩していない(写真:つのだよしお/アフロ)

 これまでも償還資金の確保は進めてきています。2023年4月には傘下の楽天銀行の上場で700億円超を調達したほか、同年12月には楽天銀行株を海外市場に追加売却しています。2023年5月には、公募増資と三木谷浩史会長兼社長の資産管理会社などへの第三者割当増資で約3000億円を調達。2023年11月には楽天証券ホールディングスの株の一部をみずほフィナンシャルグループ傘下のみずほ証券に約870億円で売却すると明らかにしました。

 一方、S&Pグローバル・レーティングは楽天グループの長期発行体格付けの方向性を「ネガティブ」としている理由について、1月26日付けのレポートで「モバイル事業を中心に非金融事業で業績の回復が進む一方で、2024―2025年に満期を迎える大量の社債償還のための資金調達が十分ではない」と指摘しています。

 今後の資金の手当てや携帯電話事業の早期の黒字化が引き続き経営課題となるなか、今回の決算で三木谷浩史氏が何を語るのか注目されます。

【主な参考資料】
2023年度決算短信・説明会資料(楽天グループ)
格付・社債情報(楽天グループ)
楽天の米ドル建て社債を「BB」に格付け(S&P)

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