セルビアのブルナビッチ首相と握手を交わす習近平国家主席。セルビアは中国やロシアと友好関係を維持している。(写真:新華社/共同通信イメージズ)
  • 西バルカンの3カ国が労働市場の統合を核としたオープンバルカン構想を進めている。
  • いずれもEU加盟を希望していたセルビア、アルバニア、北マケドニアの3カ国が域内経済の統合に向かった背景には、EUの煮え切らない姿勢がある。
  • 連帯を強める西バルカン諸国に対して、セルビアをテコに、中ロが影響力を強めようとする展開は容易に想像できるが、果たしてEUはどう動くか。

(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)

 1月22日、西バルカンの国であるセルビアが、同じく西バルカンにあるアルバニアと北マケドニアとの間で、上記3カ国の労働市場への自由なアクセス条件に関連する議定書と、3カ国の国民の電子身分証の制度を統合する議定書に署名したと発表した。これによって、西バルカン3カ国の労働市場は、3月1日より「統合」されることになる。

 この労働市場の統合は、いわゆる「オープンバルカン」構想に則ったものである。3カ国はいずれも小国だが、各国の人口を合わせると1200万人程度となる(図表1)。歴史的にも緊密な関係にあるため、市場統合を進めて経済発展を促すことが、この構想の主な狙いだ。もともとはアルバニアが提唱したアイデアである。

【図表1 西バルカン諸国の人口規模】

(出所)世銀

 一方で、このオープンバルカン構想は、欧州連合(EU)にまだ加盟していない西バルカンの国々の連合を目指すものでもある。上記の3カ国に加えて、ボスニア・ヘルツェゴビナとコソボ、モンテネグロがこの枠組みに参加すれば、人口は1800万人弱とオランダ並みとなるため、小国が多いヨーロッパでは相応の経済圏が形成されることになる。

 このオープンバルカン構想は、アルバニア発の動きとはいえ、1991年に解体した旧ユーゴ連邦を思い起させるものだ。そして、旧ユーゴ連邦の政治的な中心はセルビアであった。西バルカンの将来的な経済発展を考えるうえで市場統合は合理的だろうが、セルビアとの間で歴史的な問題を抱えるボスニアとコソボの参加は望みにくい。

 現状、ボスニアは非セルビア系住民(クロアチア系、ボスニア系)への配慮から態度を保留している。またセルビアから一方的に独立したコソボは、この枠組みへの参加を拒否している。モンテネグロは、限りなく赤に近い黄色信号が灯っているとはいえ、2025年のEU加盟への望みもあって、態度を決めかねているといったところかもしれない。