スズキがトヨタへの恩をダイハツ支援で返す?

 トヨタは今回のダイハツでの不正を契機に、軽自動車や小型車の分野でスズキにさらに接近し、ダイハツと組ませる動きに出るのではないか。すでに軽自動車の商用電気自動車(EV)では、トヨタ、ダイハツ、スズキの3社が共同開発で動いている。

「経営統合により販売部門を一体化するようなことがなく、開発や生産面での協業にとどまれば、独占禁止法には触れないのではないか」(M&A=合併・買収に詳しい金融機関の担当者)との見方がある。

 歴史的にもトヨタとスズキの関係は深い。スズキは初代社長の鈴木道雄氏が1909(明治42)年、現在の浜松市内に鈴木式織機製作所を設立したことが事業の原点にある。トヨタグループの始祖、豊田佐吉氏も浜松市に隣接する湖西市出身で自動織機の事業で財を成し、それが自動車進出の原動力となった。創業家が同郷で、織機から自動車産業に繋がる点も共通する。

スズキの鈴木修相談役、写真は2021年の会長退任会見(写真;共同通信社)

 スズキでは1950年に資金繰りに窮して大規模な労働争議が発生した際に豊田自動織機に融資を依頼したことがある。1975年にはスズキの2サイクルエンジンが排ガス規制をクリアできず、専務だった鈴木修氏(当時、現相談役)が、トヨタ社長(当時)の豊田英二氏に頭を下げ、競合相手であるダイハツからエンジン供給を受けた。

 スズキからすればトヨタグループには「恩」がある。スズキの中興の祖である修氏は相談役に退いたとはいえ、影響力を少なからず持っており、トヨタから頼まれれば、ダイハツの窮地を見捨てることはできないではないか。

 ダイハツとスズキの提携という流れは、あくまで筆者の読み筋だが、この提携が成立すれば、業界再編を後押しする可能性が高まると見ている。