ホームレスを追い出すため「空き缶パトロール」

 Gさんの「環境クリーン活動」は、道端のゴミを拾い歩いているのではない。ゴミ集積所や自動販売機のゴミ箱から、勝手に空き缶を失敬している。やっていることはホームレスと変わらない。

「春は気まぐれなお天気がいやだね。雨が降ったり止んだりする日は困るよ」

 Gさんは工場などの日雇いバイトをしながら、この空き缶の回収を「本業」にしているという。

 そもそもGさんが空き缶回収を始めたきっかけは、「ホームレスを遠ざけるため」だった。

「自治体の空き缶回収日の早朝に、ホームレスのおいちゃんたちが空き缶集めに近所をウロつくのが目ざわりだった。そこで集積所の空き缶を一時的に自宅の車庫(車はない)に保管して、ゴミ収集車が来たらすぐに手渡していたの」

 集積所の空き缶を勝手に預かっていいのか……と思ったが、そこは一旦置いておこう。収集車の時間が不規則なため、次第にゴミの手渡しができなくなり、Gさんの車庫には空き缶が溜まっていった。

「仕方がないから、自分で金属リサイクル業者に転売することにしたの。そしたら結構いい値で売れることがわかって」

 Gさんが空き缶回収を始めた2021年初頭は、アルミの買取価格が1kg当たり100円を越えた頃だ。最高値をつけた2022年の春には1kg200円を更新している。

「アルミ缶は1円弱の現金が路上に放置されているようなもの。持ち込めば即日現金が手に入る。こんな仕事は他にないよ」

 Gさんは近所のゴミ集積所だけでなく、自宅から半径5〜7km以内を毎晩「パトロール」する。Gさんのこだわりは「ホームレスとの差別化」だ。

「ホームレスのおいちゃんは透明な袋で空き缶を集めているけれど、僕は白い袋だから、中身が見えないのでオシャレでしょ」

「ホームレスは日中に集めるからものすごくジャマ。空き缶を潰す音もうるさいし、みんなにメイワクをかけているけれど、僕は夜にやっているし、住宅のそばではやらないようにしている」

 違いを強調するGさん。端から見ると同じように見えても、当人からすれば大切な線引きなのだろう。

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