中高年を襲うハードな仕事

 Zさんが勤務したのは、県内に数カ所ある大手損害保険会社の支部の一つ。配属されたのは、自動車保険の事故対応にあたる仕事だった。

 交通事故の加害者となった保険契約者に代わって、事故に遭った被害者への電話連絡、言い換えれば、治療費の支払いや示談交渉などにあたる仕事だ。

「私が担当したのはすべて対人事故の対応。ケガをした被害者、中には死亡したり植物状態になったりした被害者の対応を行うこともあります。とても重く、ストレスの多い仕事です」

 そして、この対人事故を担当しているのは、Zさんと同じくらいの50~60代の中高年男性ばかりだったという。

「対物事故の交渉係は女性の仕事でしたが、対人事故は全員男性。しかも私と同じように定年退職し、再就職で来た人たちでした。私の支部にはそういう男性が15人ほどいた」

 中高年男性たちの前職はさまざまで、元公務員、金融関係、整備関係、販売関係など。保険会社に勤務経験がある人はいなかった。

 退職した中高年をそこそこの給料で雇ってくれる職場というと、こうしたハードな仕事になるのだろうか。

「対人事故の被害者は、ケガをして傷ついています。当然、電話口でもピリピリしている。その被害者を怒らせないように、今後の流れを説明しなければならない」