活気を取り戻した「団地キッチン」田島
そこで、団地に活気を取り戻そうと、さまざまな取り組みが始まっている。
URの団地では、関連会社の日本総合住生活などが協力して、共用部のリノベーションを進めている。もともと敷地が広く、共用施設も多かったことから、それを現代のニーズに合わせて団地を丸ごとリノベーションしているのだ。
たとえば、さいたま市桜区の田島団地では、「団地キッチン」田島を進めている。これは団地内に誰でも利用できるシェアキッチン、カフェ、ブルワリーなどを設け、誰もが「作る」「食べる」「知る」を楽しめるようになっている。
さまざまな料理教室や地元野菜が並ぶマルシェなどのイベントも開催され、住む人だけではなく、周辺からも人々がやってきて、活気が生まれているという。
また、東京都足立区大谷田の「大谷田一丁目団地」では、「読む団地」として団地内のシェアハウス「ジェイヴェルデ大谷田」で本に接することができるようになっている。
シェアハウス内に約1000冊の蔵書が並ぶブックリビング、季節の行事やワークショップ、トークイベントなどが開催できるコミュニティラウンジなどを設置。そのほかベンチや芝生などで本を起点に住人同士の会話が生まれるような仕掛けが随所に設けられている。
そのうえで、専用部の居室についてもリノベーションが進められている。ジェイヴェルデ大谷田でも、初めての賃貸住まいの人にぴったりなウォークインクローゼット付きのワンルーム、友人や兄弟など2人で入居できる広めのワンルームなど、多彩なプランが用意されている。
家賃も18m2のワンルームが5万5000円、35m2が8万2000円など、比較的リーズナブルな価格帯で、若い世代の申し込みも増えているそうだ。
こうした共用部と専用部のリノベーションによって、旧来の団地のイメージを一新。最先端の住宅地、居室に改められ、そうした映像などが報道されるとともに、実際に見学する人も増加。特に若い世代を中心に「エモい」と評判になっているという。
古くからの団地の多くは、日当たり・風通し・自然環境などに恵まれ、潜在的なポテンシャルは高いものの、老朽化によってそれが忘れられてきたが、共用部のリノベーションによって、レトロでありながら生活環境が整い、それが最近の賃貸住宅にはない魅力として、「エモい」と評価されることにつながっているのではないだろうか。