イスラエル・ハマス戦争の余波で内閣改造

 スナク首相は、11月13日に内閣改造を行ったが、発端はパレスチナ問題である。

 ブレーバーマン内相は右派の有力政治家であるが、イスラエル寄りで、物議を醸す言動で問題視された。たとえば、親パレスチナ派のデモを「ヘイト行進」や「暴徒」と表現したり、新パレスチナ派のデモに手加減を加えているとしてロンドン警視庁を批判したりした。このような彼女の発言に批判の声が高まったために、スナク首相は更迭に踏み切った。

英国のスナク首相と更迭されたブレーバーマン内相英国のスナク首相と更迭されたブレーバーマン内相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 ブレーバーマン内相の後任にはクレバリー外相を横滑りさせたが、その外相の後継にキャメロン元首相を起用したために、皆が驚いている。支持率低下にストップをかけるために、キャメロンの実績や知名度を利用しようという魂胆である。

 その目論見が実現するかどうかは不明だが、内閣改造の引き金となったのがイスラエル・ハマス戦争に対する政治家の対応だったのである。

 イギリスでは、2025年1月までには総選挙があるが、支持率調査では、保守党は労働党に20%も差を開けられている。この世論動向が続けば、次の選挙で労働党が政権を奪取する可能性が高い。

 ところが、労働党もまた、パレスチナ問題を巡って割れている。スターマー党首は親イスラエルの姿勢を打ち出しているが、党内にはパレスチナ支持派の議員もおり、内輪もめとなっている。

 イギリス下院は、15日、ガザ地区の停戦を求めるスコットランド国民党提出の動議を、反対293、賛成125で否決した。スターマー党首は労働党議員に棄権するように指示したが、これに反発して56議員が賛成票を投じた。

 このように、中東情勢はイギリスの政治にも大きな影響を及ぼしているのである。