11月9日、ガザ市のアル・シファ病院にイスラエル軍の攻撃で怪我を負った人を運ぶパレスチナの人々。イスラエルはこのアル・シファ病院にハマス戦闘員が司令部を置いていると主張している11月9日、ガザ市のアル・シファ病院にイスラエル軍の攻撃で怪我を負った人を運ぶパレスチナの人々。イスラエルはこのアル・シファ病院にハマス戦闘員が司令部を置いていると主張している(写真:ロイター/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 10月7日にハマスの奇襲攻撃によって始まった戦争は、イスラエル軍が北部ガザを鎮圧する勢いで報復しており、民間人にも多数の死傷者が出ている。ネタニヤフ首相はハマスを殲滅するまで戦争を続けると明言しており、ガザにおける人道危機も深まっている。

 9日、アメリカ政府は、イスラエルが10日から毎日4時間ガザ北部で戦闘を休止すると発表した。その間、人質救出、住民の南部への移動を促進するというが、停戦ではない。

 一方、ウクライナ戦争は各地で激戦が続いており、停戦の見通しは全く立っていない。

 二つの戦争を前にして、主要国はどう対応するのか。今後の国際情勢はどうなっていくのか。

1年後に控えたアメリカ大統領選挙

 来年11月5日にはアメリカ大統領選挙が行われる。1年後の話であるから何が起こるか分からないが、今のところ、バイデン大統領とトランプ前大統領の「高齢者対決」となる公算が大きい。バイデンは11月20日に81歳になり、トランプは77歳である。

 バイデンについては、健康状態を不安視する声が高まっており、トランプは4つの刑事事件で起訴されている。しかし、今のところ、民主党も共和党も他の候補者を選定するような雰囲気ではない。

 両者が戦った場合の支持率を世論調査で見ると、拮抗している。11月5日のニューヨークタイムズ発表の世論調査では、勝敗を左右する重要6州(ネバダ、アリゾナ、ペンシルバニア、ミシガン、ジョージア、ウイスコンシン)のうち、ウイスコンシン州を除く5州でトランプが優勢である。前回の大統領選挙では、6州全てでバイデンが勝っているので、民主党にとっては深刻な結果である。

 テーマごとに見ると、トランプは経済、移民、イスラエル・パレスチナ問題で、バイデンは人工妊娠中絶や民主主義で高得点を挙げている。

 アメリカの一部の州で行われた地方選挙では、バージニア州議会選挙で民主党が下院を奪還し、上下両院で多数派となった。ケンタッキー州知事選では、中絶擁護派の民主党の現職が当選した。オハイオ州では、中絶の権利を保障する州憲法改正案が支持された。この有権者の行動は、主たる争点が妊娠中絶であったために、民主党が優位に立ったのである。