- 中国経済の低迷が深刻になってきた。不動産不況の長期化で2024年の経済成長率は3%を割り込む可能性がある。
- 景気テコ入れを狙った住宅ローン金利の引き下げは銀行の経営を圧迫。不動産大手の破綻懸念が金融システムの動揺を招く「負の連鎖」も起きている。
- 銀行セクターにも国家財政にも金融危機を回避するための余裕はあるとの見方もある。だが、リーマン・ショック当時の状況を振り返ると、習近平政権が危機回避をするのは容易ではないと考えるべきだろう。
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
11月2日、上海市で急逝した李克強前首相の告別式が北京市で行われ、習近平国家主席ら7人の最高指導部メンバーらが参列した。当局は追悼の動きが政権批判につながることを恐れ、北京市や李氏の故郷(安徽省合肥市)などで警戒を続けたが、特段の混乱は生じなかったようだ。
だが、習近平政権の心配がこれで収まることはないだろう。中国共産党の一党支配を根拠づけてきた「好調な経済(豊かな暮らし)」に赤信号が灯っているからだ。
中国経済を長年支えてきた不動産市場は一向に改善する兆しを見せていない。
中国政府が発表した今年9月の主要70都市の新築住宅価格動向によれば、全体の77%にあたる54都市で前月に比べて価格が下落した。政府が規制緩和を行ったものの、4カ月連続で半数を上回る都市の不動産価格が値下がりする結果となった。
格付け会社S&Pグローバル・レーティングは「不動産市場の低迷が深刻化した場合、中国の来年の経済成長率は3%を割り込む恐れがある」との悲観的な見方を示している*1。
*1:中国経済は24年に2.9%成長も、不動産危機拡大なら-S&P(10月24日付、ブルームバーグ)
不動産不況は中国人の懐に大きな打撃を与えている。
地方政府にとって主な財源である土地使用権の売却収入が急減していることから、中国各地で公務員らの給与削減や未払いが相次いでいる*2。
*2:中国天津市、嘆く公務員 「2回昇進したのに年収2割減った」(10月23日付、日本経済新聞)
9月の土地使用権の売却収入は前年比21%減と21カ月連続の減少となっており、地方政府は財政破綻を回避するため、リストラをせざるを得ない状況にある。
民間企業の実態は明らかになっていないが、景気悪化を受けて、地方政府以上に過酷な賃下げを実施している可能性が高いだろう。