- 米WTI原油先物価格が11月1日、3日連続で下落し2カ月超ぶりの安値をつけた。イスラエル・ハマス紛争による中東からの原油供給の減少懸念が後退しているためだ。
- だが、親イラン武装組織フーシ派がイスラエルを狙った攻撃を仕掛けていると見られ、戦火が拡大する懸念がくすぶる。
- フーシ派かつてサウジの石油施設を攻撃した「前科」がある。同様のことが起きるリスクは排除できず、そうなれば原油価格が1バレル150ドルを超えて急騰するかもしれない。
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
11月1日の米WTI原油先物価格は前日比0.58ドル安の1バレル=80.44ドルで引けた。3日連続で下落し、終値としては2カ月超ぶりの安値を付けた。10月上旬以降の原油高が帳消しになった形だ。中東情勢の緊迫化は続いているものの、「中東地域からの原油供給が減少する」との懸念が後退していることが主な要因だ。
今後、原油価格はどのように推移するのだろうか。世界の原油市場の需給状況を見た上で、中東地域の地政学リスクについても考えてみたい。
石油輸出国機構(OPEC)の10月の原油生産量は前月比18万バレル増の日量2790万バレルだった。サウジアラビアなどが自主減産を続けているが、ナイジェリアやアンゴラの増産が全体の生産量を押し上げた。OPECの生産増は3カ月連続となった*1。
*1:OPEC産油量3カ月連続増、ナイジェリアなど主導=ロイター調査(10月31日付、ロイター)
サウジアラビアとともにOPECプラス(OPECと非加盟の大産油国で構成)を主導するロシアも原油輸出量を増加させているようだ*2。「輸出量を日量30万バレル減らす」と公約しているのにもかかわらずに、である。
*2:Russia's Oil Exports Climb Despite Its Commitment To Cut Supply(11月1日付、ZeroHedge)
世界最大の原油生産国となった米国も好調だ。原油生産量は日量1320バレルと過去最高水準で推移している。
米エネルギー情報局(EIA)は10月31日、「米国の8月の原油生産量は前月比0.7%増の日量1305万バレルとなり、月間として過去最高となった。これまでの最高記録は2019年11月の同1300万バレルだった」ことを明らかにした。