長引く戦争には、イスラエル国民もうんざりしており、10月23日にイスラエル民主主義研究所が発表した世論調査によると、政府を信頼すると答えたのはわずか20%にすぎなかった。戦時中の政府に対する支持率としては異常な低さであり、ネタニヤフ政権にとっては思いもよらない結果であろう。

 イスラエルの前首相で野党指導者のヤイル・ラピドは、11月15日、テレビ局のインタビューで、ネタニヤフ首相は即刻辞任すべきだと要求した。つまり、戦争終結を待たずに辞任せよということであり、ラピドは「国民の信頼を失った首相の下で長い軍事作戦を遂行することは許されない」と述べた。

 具体的には、総選挙ではなく、与党リクードの党首をネタニヤフから別の人物に代えることで対応すべきだという。リクードは、この発言を「戦時下においては恥ずべきもの」と批判した。しかし、首相交代論が出るほど、ネタニヤフは不評だということである。

イギリス政界も揺れる

 最初に奇襲攻撃をしかけたのはハマスであり、そのテロ行為こそ厳しく弾劾されねばならない。ところが、イスラエルの報復攻撃によってガザの民間人が多数犠牲になるに及んで、国際社会ではイスラエルを批判する声が高まっていった。それは、パレスチナ人と同じイスラム教徒が多数を占める国のみならず、キリスト教徒の多い欧米諸国でも同様である。

 これもネタニヤフ政権にとっては大きな誤算である。世界に伝えられる映像の圧倒的多数は、ガザの市民、とりわけ婦女や子どもたちが犠牲になっている姿であり、それが国際世論を形成するのに大きな役割を果たしている。

 欧米諸国では、ユダヤ人も、パレスチナ人もコミュニティを形成しており、親イスラエル、親パレスチナの二つの勢力が対立している。

 たとえば、第一次世界大戦中に、アラブ人とユダヤ人の双方に対して矛盾する手形を切るという二枚舌外交によって今のパレスチナ問題を生み出したイギリスでは、政権の座にある保守党も野党の労働党も、今回のイスラエル・ハマス戦争を巡って党内の意見の分裂が目立ってきている。