- 習近平・中国国家主席とバイデン米大統領は15日、米サンフランシスコ近郊で6年ぶりに会談した。両国間の緊張緩和に向けた意見が交わされた。
- 一方、習近平政権の方向性を国内外に打ち出す重要会議である三中全会(第3回中央委員会全体会議)がいまだ開かれていない。慣例では11月までに召集されているはずだ。
- 党内対立が起きている、経済の失策を指摘されたくない、独裁化が進み形式的な会議が不要になった、米中首脳会談の成果を持ち帰りたい・・・。さまざまな憶測を呼んでいるが、はたして真相は?
(福島香織:ジャーナリスト)
11月半ばになっても、三中全会(第3回中央委員会全体会議)が開かれていない。これは異常事態ではないか。この秋は確かに一帯一路国際サミットフォーラムの開催、米国訪問と習近平の秋の外交日程が詰まっていた。だが三中全会は第3期目となった習近平政権の方向性を国内外に打ち出す重要会議だ。いまだ、日程すら出てない理由は何なのか。
共産党は5年に1度、全国の党代表が集まって党大会を開き、中央委員会メンバーを選出する。中央委員および候補委員ら300人前後が選出されると、党大会閉幕日当日に第1回中央委員会全体会議(一中全会)が開催され、中央委員会によって新指導部が選出される。それが政治局および政治局常務委員だ。その翌年早々に第2回中央委員会全体会議(二中全会)が開催され、国務院や閣僚など国家機構の人事、全国人民代表大会、政治協商会議の幹部らの主要人事が決められる。
その年の秋、つまり党と国家の新指導部が確定したのちに開催される中央委員会全体会議が三中全会で、慣例では9月から遅くとも11月までの間に招集される。この三中全会が事実上、新指導部体制の今後5年にわたる政策の方向性を打ち出すものとなる。
三中全会がいつまでたっても招集されていないということは、第3期目の習近平政権の政策方針はまだ決定されているわけではない、ということだろうか。
党規約によれば、中央委員会全体会議は少なくとも年に1回は開かれなければならない。指導部(政治局)は必ず年に1度、中央委員会に対して活動報告を行い、その監督を受けねばならない、というルールがあるからだ。必ずしも秋に行われるというわけではないが、党大会が秋なので、秋開催が慣例だ。
1982年の第12回党大会以降、最も遅い時期に行われた中央委員会全体会議は1990年の七中全会だった。趙紫陽総書記が天安門事件で失脚し、1989年6月の四中全会で上海市書記だった江沢民が急遽、総書記に抜擢された翌年だ。
1989年11月に五中全会が開催され、翌年3月に六中全会が開催され、12月に七中全会が開催された。この七中全会は当初、9~10月に開催されるという予測が香港メディアで報じられていたが12月の冬にずれ込んだ。それは、第8次5カ年計画をめぐる鄧小平と李鵬ら左派の対立が激しかったからだと言われている。
とすると今年、もし三中全会が12月以降にずれ込むとしたら、1990年当時のように激しい党内の経済路線対立があるからではないか。ちなみに今年はすでに二中全会が2月に開催されているので、党規約で決められている「年に少なくとも一度の中央委員会全体会議を開催しなければならない」というルールはクリアできている。なので、三中全会が来年にずれ込む可能性もあるかもしれない。