- 中国の習近平国家主席が11月14日、訪米してバイデン大統領と会談した。両国の関係修復に向けて前進したと評価する声もある。
- だが、その中身を詳しく分析すると、「会わないよりはマシ」程度の成果しかなく、むしろ台湾有事に対する米国の警戒感は高まった感すらある。
- 軍事衝突回避のための交流再開も、実態は軍のハイレベル対話とは言えず、会談後にバイデンは習近平を「独裁者」と呼ぶ始末。米中首脳の間にある埋めがたい溝がむしろ際立ったものだった。
(福島香織:ジャーナリスト)
中国国家主席の習近平が6年ぶりに訪米し、サンフランシスコでバイデン大統領と会談した。フェイス・トゥー・フェイスの米中トップ会談は昨年11月のバリ以来、およそ1年ぶり。この米中首脳会談をどのように評価するべきか、昨年の会談よりも米中関係は進歩したのか、米中どちらが有利に会談を進められたのか、整理してみたい。
習近平は11月14日にサンフランシスコ入りした。ファーストレディの彭麗媛は同行せず、レッドカーペットもなく、アジア太平洋経済協力会議(APEC)出席者の1人としての訪問だった。消息筋によれば、習近平は事前に、国事訪問扱いにして空港ではきちんとレッドカーペットで迎えるよう要請したが、これは米国側から断られたらしい。その代わり、なのかは知らないが、ファイロリガーデンでのバイデンとの会談のときは、習近平の乗った中国の高級車「紅旗」から建物のゲートまでの短い通路にレッドカーペットが敷かれていた。
新華社を通じた中国側の発表によれば、習近平は「世界は百年に一度の未曾有の大変局に直面しており、中米には2つの選択肢がある。1つは団結協力を強化し、手を取り合ってグローバルな挑戦に対応し、世界の安全と平和を促進すること。もう1つは、ゼロサム思考で、陣営対立をあおり、世界を動揺と分裂に向かわせること。どういう選択をとるかが、人類の前途と地球の未来を決定する・・・地球は中米、2国とも包容できる。それぞれの成功がお互いのチャンスとなる」などと語り、米中関係の改善への期待をにじませた。
習近平は「中国の発展には独自のロジックとルールがあり、中国式現代化モデルで中華民族の偉大なる復興を推進しているところで、中国としては植民地や略奪の古い道を進むつもりはなく、強国覇権のゆがんだ道を歩むつもりもなく、イデオロギーの輸出をするつもりもない」「米国を超えようとか、米国にとってかわろうとか、思ったこともないし、米国も中国を弾圧する必要はない」と従来語ったことを繰り返した。
そのうえで、この会談では米中が5本の柱を打ち建てる共同の努力をして、新たな展望を持つべきだ、とした。
この5本の柱とは、(1)正確な認知、(2)意見の違いの効果的な管理コントロール、(3)互恵的協力の推進、(4)大国としての責任、(5)人的文的交流促進、である。