「行き先はうなぎに聞いてくれ」

 この噺はビジュアル、すなわち鰻を扱うパントマイムこそがすべてというネタで、8代目の先代・桂文楽師匠の十八番でした。資本主義に馴染まない士族たちの雰囲気がよく伝わる一席であります。

「素人鰻」とほぼ同じストーリーに「鰻屋」という噺があります。私も一門の龍志師匠に稽古をつけていただきました。鰻を捕まえたまんま都電に乗って行ってしまうというナンセンスな設定が笑えます。

 ところで、少し飛躍しますが、「行き先は鰻に聞いてくれ」というオチは、「責任は俺にはない」という意味ではまさに「資本主義の行く末」にも聞こえてこないでしょうか?

 この落語に対する買いかぶりかもしれませんが、資本主義は放っておくと、環境まで破壊すると予見したのがマルクスなのですから、カネばかり稼ごうとしている資本家にその行き先を尋ねても、「前に回ってこの投資した分のカネに聞いてくれ」と言いそうな気がしてなりません。誰もが「その先」を想定できない、不確実性の高いシステムが資本主義社会なのですから。

【連載】
第1回:資本主義は「鰻」と同じ? その心は「どこに向かうか誰にもわからない」
第2回:公衆便所でひと儲け! 江戸っ子が考えたビジネスモデルに見る現代の企業
第3回:立川談志は落語界の「貨幣」だ! マルクスのような「しつこさ」で代替不能