インドネシアでもフィリピンでも一般の人々は、華僑が政治家と組んで富を独占していることに強い不満を抱いているが、中国に対して悪意を抱いているわけではない。それは両国が中国とは海を隔てており、歴史において中国とほとんど関わりがなかったからであろう。
インド人とベトナム人の対中感情
一方、多くのインド人は中国に対して決してよい感情を持っていない。それは1962年の国境紛争に敗れて屈辱を味わっただけでなく、アジアの2大国である両国の気質の違いが反映されているとも言える。
大まかに言うと中国人は無宗教で現世利益的、それに対してインド人は宗教を重視している。インド人は中国人に仏教を教えたとして優越感を持っており、現世利益的な中国人を軽蔑してきた。さらに、21世紀に入って中国が奇跡の成長を遂げて米国と覇を争うほどの存在なると、嫉妬心も手伝って、インド人は中国に対する反感を強めている。それはモディ首相の態度や言動を見ているとよく分かる。
ベトナムについては、これまでもJBpressに書いた通り、歴史の中で何度も中国の侵略を受けたことから、ベトナム人は中国を嫌うとともに恐れている。中国に対して自尊心を損なうことなく領土を保全し、独立を維持することは、ベトナム外交の中心課題になっている。
米国が中国に対抗する上でインドとベトナムをその中心においたことは、アジアの人々の深層心理をよく分析した結果と思われる。