中村さんは広尾町に30人前後いる猟師の中で最年少、唯一の女性猟師だ。

 猟師になる前は、東京で「ヒトサラ」というグルメサイトの編集部で日本全国の食材や食にまつわる記事を企画・編集していた。

 それがきっかけで猟師という職業に興味を持ち、27歳の時狩猟免許を取得した。

鹿女まやもんの愛称で親しまれる

 狩猟免許を取得した中村さんは、猟が解禁される秋から冬になるとよく北海道に遠征していた。

 北海道での狩猟はダイナミックだ。それに惚れ込んだ中村さんは、狩猟期以外の「有害駆除」にも参加したいと思うようになっていった。

 そして思い切って、広尾町への移住を決めた。

鹿の肉を骨から剥がす中村麻矢さん(食の熱中小学校実習、筆者撮影)

 中村麻矢さんの猟師としての特徴は、単に狩りをするだけでなく、獲物をさばいて精肉とし、その肉を自分なりのアイデアで美味しい料理に変えてしまうこと。

 また、角や皮も革製品などに加工してムダのない狩猟を心がけているという。

 駆除したら終わりという考え方が多いなかで、そこまで一貫して行う猟師は珍しい。そのため地元の猟師からも親しまれ頼りにされている。

 彼らからは「鹿女まやもん」の愛称で呼ばれている。

「おいしくジビエをいただくために、どのようにさばき、料理するかを考えるのは本当に楽しいですね。猟師の一番の楽しみだと思っています」

 その姿勢が謙虚でまた可愛らしく地元の猟師には映るのだろう。中村さんが都会から来た「よそ者」扱いされずに地元に溶け込んでいる大きな理由と言えそうだ。