- 長年、米国最大の輸入相手国だった中国が、メキシコにその座を奪われ、2位のカナダに続く3位に後退した。
- 米中対立を背景に、米政府による追加関税などの影響を受けた形だが、一方で自動車関連を中心に中国企業のメキシコ進出が加速している。
- 米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の恩典を受けるメキシコが、中国企業による米国向けビジネスの「橋頭堡」になりつつある。
(水野 亮:米Teruko Weinberg エグゼクティブリサーチャー)
メキシコ向けのフライトに行列をなす中国人ビジネスパーソン
先月、メキシコ北部地域の工業都市モンテレイ市で開かれた展示会に参加するため、ロサンゼルス国際空港で搭乗を待っていたときのことである。筆者は頻繁にメキシコに出張しているが、いつもとは明らかに様子が違っていた。これまで乗客の多くはメキシコ人だったのに対し。今回は中国人と思われる乗客がかなりの割合にのぼっていたのである。
モンテレイがあるヌエボレオン州をはじめ、チワワ州、コアウイラ州など米国と国境を分かつ地域には、進出する外国企業が後を絶たない。2023年上半期の対メキシコ対内直接投資額のうち、ヌエボレオン州への投資額は全体の53%、チワワ州は9%、コアウイラ州は8%を占め、この3州だけで実に7割を占めている。投資企業の顔ぶれを見ると、欧米系企業が目立つが、韓国系、そして多いのが中国系企業だ。
メキシコ北部に投資する中国系企業で目立つのが自動車部品メーカーだ。直近では自動車ドア・シートのYanfeng、自動車用熱交換器システムのYinlun、アルミダイカストのNingbo Xusheng Auto Technologyなどが同地域での投資、あるいは投資計画を発表している。
過去6年間(2017年~2022年)の中国の対メキシコ直接投資額は累積で2億4400万ドルにのぼり、その前の6年間(2011年~2016年)の7000億ドルから3.5倍に増えている。
中国企業の「メキシコ熱」の原因は何か?
背景には米国の通商政策や貿易関係が絡んでいる。