杜撰運営の最終責任者は誰なのか

 だが、韓国政界では責任の所在を巡って激しい攻防が展開されている。

 与党と政府は大会準備の不備の責任を、文在寅政権と大会主催側である全羅北道に転嫁している。韓国の報道によると、ジャンボリーを1年後に控えた22年8月時点で基盤施設の工程率が37%に過ぎなかったが、主な原因はジャンボリーが開催される敷地を造成するのに5年かかったためだ。

 全羅北道はジャンボリー会場に選定されたセマングムに新しい埋立地を造成し、大会会場として使うという計画を持っていた。この敷地の埋め立てが完了したのは21年6月で、同年11月に入ってからやっと敷地内の基盤施設工事の入札公告が始まった。

 そのため、メインセンター完工予定日は入札当時から23年12月になり、大会場の上下水度施設や電気工事の完工日も大会終盤に予定されるなど、施設工事が何一つ円滑に行われなかった。

 それだけではない。与党「国民の力」は、全羅北道のセマングム地域の開発にジャンボリーが利用されたと見ている。セマングムには10年前に完成された大規模の埋め立て地があったにもかかわらず、政府予算で追加埋め立てを推進し、干拓地を横切る新道路を建設した。新空港建設のための予備妥当性調査も免除された。

 全羅北道はジャンボリーを口実に社会間接資本(SOC)として国際空港建設、高速道路新設、新しい港湾建設などを主張し、文在寅政府から11兆ウォンの予算を獲得したとの報道も出ている。大会後には敷地を返還してもらってK-POP国際学校を設立するという計画も持っていたといわれている。国民の力は監査院の調査で自治体と前政権の結託と業務怠慢を徹底的に究明すると主張する。

 反面、野党「共に民主党」はずさんな大会運営を犯した尹錫悦現政権こそが大会失敗の最終責任者だと主張している。

 同大会は女性家族部が主軸になって5人の組織委員長が任命されたが、このうち3人が尹錫悦政府の長官たちだ。本大会運営は組織委員会が最終責任者として、計1100億ウォンの大会予算のうち70%以上が組織委員会で使われた。しかも主務省庁の女性家族部長官は昨年、国会常任委員会で「ジャンボリーの準備不足」を指摘した民主党議員に、「問題ない」と豪語したが、実は現場の状況を全くチェックできなかった。業務怠慢である。民主党は尹大統領の謝罪と首相の辞任、そして徹底した国会レベルの調査を主張している。

 全羅北道は全羅北道で、謝罪記者会見を開いたものの、中央政府が全責任を全羅北道に押し付けていると批判した。問題と指摘されたSOC予算については、ジャンボリーとは関係ない予算と抗弁しながら、関連報道を名誉棄損で訴えると警告した。

 現在、韓国国民の世論はざっと6対4で、文在寅政権よりは尹錫悦政権に責任があるという意見のほうが優勢だ。ただ、ジャンボリー事態にもかかわらず、尹錫悦大統領の支持率はむしろ少しずつ上昇しているので、事態収拾過程で見せた尹大統領のリーダーシップを肯定的に評価しているのかもしれない。

「国際的な恥」「イカゲーム」「大惨事」などの非難が続出したセマングムジャンボリーはなんとか12日間の日程を終えたが、ここからは監査と国会レベルの調査が予想されていて、韓国ではまだしばらくこの事件がメディアで取りざたされることになりそうだ。

 ただ、韓国メディアが「宴は終わり、これからは審判のとき」と口をそろえているにもかかわらず、複雑な組織と曖昧な業務分担、多様な事業内容などにより、メディアと国民が満足できる責任究明は決して容易ではなさそうだ。