7月27日、ニジェールの首都ニアメーで与党本部が炎に包まれる中、反乱軍兵士を支持する民衆がデモを行った(写真:AP/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 ウクライナ戦争は激戦が続き、モスクワにまでウクライナの無人機による攻撃が到達している。ロシアもまた、首都キーウに無人機による攻撃を行っている。欧米がウクライナ戦争に集中しているときに、アフリカ西部ニジェールで軍事クーデターが起こった。西側はこのクーデターを非難しているが、ロシアは支持している。

 実は、中東やアフリカで大きな地殻変動が起こっており、それがウウライナ停戦の糸口になるかもしれないのである。

ニジェールで軍事クーデター

 アフリカ大陸の西部に位置するニジェールで、7月26日、軍部がクーデターを起こし、親欧米派のモハメド・バズム大統領を追放した。首謀者のアブドゥハーマン・チアニ大統領警護隊長は憲法を停止し、自ら国のトップに就任した。

 ニジェールは旧フランス植民地であり、宗主国フランスへの反感が強く、クーデター後に首都ニアメーのフランス大使館が暴徒に襲撃されるなどして、治安が極度に悪化している。そのため、フランス政府は現地にいるフランス人を航空機で退避させており、同じ航空機にドイツ人や日本人も搭乗してパリに到着している。イタリア政府も特別便でイタリア人をローマに運んでいる。

 ニジェールは人口約2600万人の世界最貧国の一つで、大多数がイスラム教徒である。また、原子力発電の燃料であるウランの有数な産出国であり、EUのウラン輸入の約24%を占める最大の供給国である。

 ウクライナ戦争後、EUはロシア産のウラン燃料の輸入を削減しており、ニジェールが反西側に寝返ったことで、今後の供給への不安が増している。電力の7割を原発に依存するフランスにとっては、大きな懸念材料である。

 クーデターの背後にはロシアの存在が見える。ワグネルが傭兵として、軍事政権側についており、ウランなどの天然資源もワグネルを介してロシアへ渡る構図となる。