世界が羨む“Visual kei”バンド

  ひしめき合うヴィジュアル系シーンの中で、the GazettEの人気は頭ひとつ飛び抜けている。東京ドーム公演(2010年)を行った数少ないヴィジュアル系バンドであることがそれを証明しているし、海外でも高い人気を誇っている。

 ヴィジュアル系バンドが海外での知名度を広げた要因として大きいのは、アニメ主題歌に起用されたことだ。the GazettEは2010年7月のリリース「SHIVER」がアニメ『黒執事II』のオープニングテーマ曲に起用されている。

the GazettE「SHIVER」(2010年)

 しかしながら、アニメが呼び水になった他バンドやジャパンカルチャーブームを考えれば、少々遅い時期であったようにも思う。その前年2009年にヴィジュアル系の海外人気を受けて開催された『V-ROCK FESTIVAL』のトリを務めており、このときすでに国内外での人気は高かった。本格的な海外ツアーを行ったのも2013年が初であり、他バンドより海外展開も遅い。つまり火がついたきっかけはアニメ主題歌でも海外展開でもなく、“Visual kei”の知名度とともに、着実に人気を伸ばしていたのである。

 なぜこれほどまでに人気を得たのか? そこにあるのはダークでゴージャスというべき、徹底した世界観構築、コンセプトであるだろう。

 先述のように2006年に英語表記に変更してから、洗練された魅せ方へ変化し、現在に続くダークなスタイルへと深化していった。メロディアスとヘヴィネス、きらびやかさとダークさがせめぎ合う楽曲とサウンド。そして、徹底的に作り込まれたビジュアル、アートワーク、MV、ライブ演出の数々……。CDや映像作品の初回限定版に見られるブックレットやボックスといった仕様は採算度外視と思うほどに豪華なものだ。こうしたセルフプロデュースによるこだわりにこだわり抜いた世界観は、どこを取ってみてもヴィジュアル系イメージのすべてを凝縮している。

the GazettE「UNDYING」(2016年)

 このような徹底的な世界観と2次元的でもあるアイコンの存在が、あたかも非現実的世界を映し出すようなインターネットを通じ、“Mysterious”、“Cool”と称される、世界が羨むほどの“Visual kei”、“V-ROCK”の代表格バンドになったのである。

 世界的に評価される反面でメインストリームから見れば閉塞的でもあり、何かと偏見も多いのがヴィジュアル系だ。しかし、the GazettEはそうした世間からの偏見を一手に請け負ってきたかのようにも思えるし、同時にシーンの外にまでその存在を届かせた数少ないヴィジュアル系バンドだ。

 そのことを象徴しているのが非ヴィジュアル系アーティストが集まる音楽イベントやフェスへの参加である。