ヴィジュアル系バンドとしての誇り

 2014年に開催された『LOUD PARK』への出演は大きな物議を醸した。メタルファンからは賛否というよも、圧倒的に“否”の声が多かった。そんな歓迎されているとは言い難い状況であるから、「ジャンルの壁をぶち壊す」というノリで来るのだろうと大方の人は思っていたはず。

 しかし、蓋を開けてれば、ボーカル・RUKIの言葉「“なぜヴィジュアル系が?”とお思いの方もたくさんいらっしゃることでしょう。僕らもなぜここにいるのかわからない(笑)。でも僕たちはみなさんと同じようにメタルが大好きなので……」という拍子抜けするような姿勢だった。とにかく音とライブで判断してくれと言わんばかりの潔いステージは、ひやかしで観ていたであろうメタルファンをも巻き込んで盛況に終わったのである。

 同様に、スリップノットが主催する『KNOTFEST』や『SUMER SONIC』、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』に『COUNTDOWN JAPAN』、『氣志團万博』、そして『イナズマロックフェス』、『a-nation』に至るまで。これほど多様性に富んだフェスに出ているヴィジュアル系バンドはいない。

 真夏の野外は似合わない、他ジャンルとの親和性は低い、と避けられてきた部分もあったと思われるヴィジュアル系の偏見に臆することなく、the GazettEは濃いメイクとヘヴィな轟音を武器にその存在を知らしめてきた。そこには、時に揶揄されることがあっても、貫き通す「ヴィジュアル系ロックバンドとしての誇り」がうかがえる。

 そんな彼らであるから、自分たちを応援してくれるファンの対しても大きな誇りを持っている。ファンとの信頼関係はどのアーティストにでもあることだと思うのだが、彼らはそれをライブにおいて形で、言葉で惜しげもなく表現している。そのステージを見れば、ファンが彼らの音楽を本気で求め、彼らががファンを求めているかがわかるはずだ。

THE GAZETTE「BLINDING HOPE」LIVE AT 2021.12.23 TOKYO GARDEN THEATER

 the GazettEの魅力、その最たるものは「オレたちがいちばんカッコいい」と思って活動していることだろう。謙遜することなく、自分たちの作る音楽、やっていることがいちばんだという自信。それこそが見る者、聴く者への大きな説得力になっている。

 何かと他人の評価や、協調性を気にすることの多い昨今。しかし、ロックとは、バンドとは、ヴィジュアル系とは、本来そういった自信が大前提にあるものなのではないだろうか。the GazettEは気持ちいいまでにそうした自己愛に満ち、孤高の美学を貫いてるバンドなのだ。そして、ヴィジュアル系と呼ばれること、括られることを由としないバンドもいる中で、自分たちがヴィジュアル系であることを気持ちいいくらいに誇っている。

 そう、the GazettEは自他ともに“ヴィジュアルロックの最高峰”と讃えるに相応しいヴィジュアル系ロックバンドなのだ。