ブリンケン米国務長官は中国の王毅政治局員との会談で麻薬「フェンタニル」を話題にした(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
  • ブリンケン米国務長官が13日、中国外交担当トップ王毅政治局員と会談した。
  • テーマの一つが中国産の「フェンタニル」。米国で社会問題となっている強力な麻薬だ。
  • 米中対立が深刻化する中、「21世紀版アヘン戦争」とも言われる事態となっている。

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 ブリンケン米国務長官は7月13日、訪問先のインドネシアで中国外交担当トップの王毅政治局員と会談した。ブリンケン氏は今年6月中旬、米国務長官として約5年ぶりに中国を訪問した際にも王氏と会っており、米国外交トップの会談は2カ月連続だ。

 バイデン政権はこのところ中国との対話に意欲的だ。

 中国とのさらなる関係悪化を防ぐため、対話を制度化し、両国の衝突を回避できる「ガードレール」を設けようとしていると言われている。筆者は「米国は中国と緊急に協議しなければならない事情があるのではないか」と考えている。

 中国外交部は翌14日の定例記者会見で、米国との間で「フェンタニル」の問題について意見交換を行ったことを明らかにした。ブリンケン氏も6月の訪中時にフェンタニルの問題を協議したことを認めている。

 フェンタニルは医薬用麻薬のことだが、違法に製造・流通されており米国で最も問題になっている薬物のひとつとなっている。米国社会は銃乱射をはじめ様々な問題を抱えているが、特に深刻なのが薬物中毒だ。フェンタニルは、その最大の原因とも言われている。

 モルヒネの50倍の強度を持つ鎮痛剤であるフェンタニルは、末期のがん患者の苦痛を緩和するために開発された。だが、過剰摂取による死亡事故が多発している。