街の飲食店も集まれば大手資本に対抗できる(写真:ロイター/アフロ)
  • 小さな魚が集まり、大きな魚のフリをして協力して泳ぐ──。絵本『スイミー』を地で行く会社がある。中国のサイケイだ。
  • 街の飲食店のデータを集約・共有し、そのデータを基に自動マーケティングや調達管理のデジタル化などを実現している。
  • ビジネスにおいて不利な状況に置かれやすい零細企業や個人店舗も、集結し、まとまれば、サステナブルな経営を実現できる。

(*)本稿は『GAFAも学ぶ!最先端のテック企業はいま何をしているのか 世界を変える「とがった会社」の常識外れな成長戦略』(東洋経済新報社)の一部を抜粋・再編集したものです。

(成嶋 祐介:一般社団法人深圳市越境EC協会日本支部代表理事)

※前編『リアル店舗に注力するアマゾンと「究極のEC」を目指すウォルマートの現在地』から読む

 みんなが、一ぴきの おおきな さかなみたいに およげるように なった とき、スイミーは いった。「ぼくが、めに なろう。」

『スイミー』(レオ=レオニ/作 谷川俊太郎/訳 好学社)

『スイミー』という絵本を子どもの頃に読んだという方は多いと思います。

 兄弟の魚たちが大きな魚に飲み込まれ、ひとりぼっちで海をさまよっていたスイミーが、赤い小さな魚の群れを見かけた。でも、大きな魚に食べられるのを恐れて岩陰から出てこない。

 そこで、スイミーが「大きな魚のフリをして、みんなで協力して泳ぐ」ことを提案。赤い魚たちは一生懸命に練習し、「大きな魚」となって堂々と泳げるようになった─というおなじみの物語です。

 さて、ビジネスという「海」の中で、この「小さな魚」と同様に弱い立場に置かれているのが、零細企業や個人が営む街の飲食店です。特にコロナ禍以降は、名店といわれる老舗の飲食店ですら次々と店をたたむ事態が生じました。

 その跡地に大手資本の商業ビルや横丁スタイルの店舗がオープンし、淘汰される現象が起きています。

 こういった個人経営の飲食店は、プロモーションや広告などに投じる資金やマンパワーが乏しく、SNSを駆使するリテラシーも弱いため、どうしても大手資本の飲食店にはかないません。

 というより、飲食業界自体がDXの波に取り残され、非効率な経営が残るところが多く見られます。これは飲食だけでなく接客をともなうリアル店舗のビジネスにおおむね共通する課題でもあります。

 しかし、この一軒一軒の飲食店が「大きな魚」になって、プロモーションやメニュー開発、仕入れなどで協力し合えば、大手資本の飲食店に勝てるかもしれない──。そんな「スイミー」のようなアイデアを実現している最新テック企業があります。

 それが「サイケイ(再恵)」という中国の企業です。

『スイミー』を描いたイタリアの絵本作家、レオ・レオニ(写真:Mondadori/アフロ)

 サイケイは、SNSなどへの露出やテイクアウトメニューの開発、調達管理のデジタル化と、飲食店が立ち遅れていたデジタル化の支援を行うマルチプラットフォームです。

 このサイケイを活用し、テイクアウトメニューの改善や、TikTokなど人気SNSで動画プロモーションを行い、売上を伸ばす飲食店が増えており、加盟店はじつに200万店に上ります。