文在寅・前大統領。今年4月、自宅近くに書店をオープンさせた(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

 支持率が低迷し、なかなか上昇の切っ掛けがつかめない韓国の尹錫悦大統領だが、国際舞台での存在感は増している。G7広島サミットを契機に各国と華々しく首脳会談を行い、韓国が自由・民主主義国として国際秩序を守るグローバルパートナーとしての地位を確かなものにしようとしている。

 外交が支持率の向上に寄与する割合は小さいが、韓国国民は誇りの高い人々であり、感情に左右されやすい人々である。G7の前後、尹錫悦大統領を評価する欧米首脳を目の当たりにして、韓国国民の尹錫悦氏に対する認識が変わってくるかもしれない。

 それに引き換え、国民からの人気が目に見えて暴落しているのが、前大統領の文在寅氏だ。対北朝鮮外交に没頭し、欧米の首脳の信頼を喪失した文前大統領は、どうやら国民からそっぽを向かれ、現職当時の政策の失敗が次々に露呈し、悲惨な老後を迎えることになりそうである。

 文在寅政権は自身の政策を自画自賛することで、その失敗が国民の目に移らないよう腐心してきた。しかし、韓国で現在公開中の、同氏の自画自賛をテーマにしたドキュメンタリー映画『文在寅です』が驚くほどの不人気ぶりを見せている。これは、そうしたごまかしがもはや通じなくなったことを実証しているのであろう。

映画『文在寅です』の極端な興行不振は文在寅離れを象徴

 文在寅前大統領退任後の日常を紹介するドキュメンタリー映画『文在寅です』の観客動員数が、今月10日の公開後、伸び悩んでいる。

 それでも公開直後は、1週間で総観客動員数が約7万8000人あった。ただ、この中には無料チケットや割引チケットで入場した人が1万人以上いる。それに加え、映画館でも別途無料チケットや割引チケットを配布したようである。

 しかし、週が明けた15日には1日の観客数が3522人と急減した。危機を感じた野党「共に民主党」系のインターネット・コミュニティーサイトには、映画の鑑賞を呼びかける書き込みが相次いでいる。