(湯之上 隆:技術経営コンサルタント、微細加工研究所所長)
4年ぶりに減収となったTSMC
4月20日、台湾TSMCが2023年第1四半期(Q1)の決算発表を行った。それによると、2023年Q1の売上高は、2022年Q4の199.3億ドルから16.1%減収の167.2億ドルとなり、営業利益率は52.0%から6.5ポイント下がって45.5%となった(図1)。
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2022年後半以降、コロナ特需が終焉し、深刻な半導体不況に突入しており、TSMCにもその不況の影響が出てきたことになる。ただし、「4年ぶりの大幅減収」といっても、営業利益率が45.5%もあり、米インテルおよびサムスン電子などすべてのメモリメーカーが深刻な赤字に陥っていることと比較すれば、どうも「TSMCは別格」と言えそうだ。
そうはいってもTSMCが大幅減収になったのは、紛れもない事実である。そこで本稿では、TSMCが、なぜ大幅減収になったのか、その原因はどこにあるのかを分析する。
結論を一言でいうと、「米国向け、先端(7nmと5nm)、高性能コンピュータ(HPC:High-Performance Computing)とスマホ用半導体が落ち込んだ」ということになる。したがって、HPCとスマホ需要が回復すれば、TSMCの業績は上向くと予測できる。