ケビン・マッカーシー下院議長と会談した台湾の蔡英文総統(4月5日ロサンゼルスで、写真:ロイター/アフロ)

蔡英文会談に超党派17人下院議員が同席

 訪米中の台湾の蔡英文総統とケビン・マッカーシー米下院議長(共和、カリフォルニア州選出)は4月5日、ロサンゼルス郊外のロナルド・レーガン大統領図書館で会談した。

 親米派・蔡英文氏にとっては総統としての最後の訪米だ。

 下院議長が蔡英文氏に会うのは2022年8月、ナンシー・ペロシ下院議長(当時、民主、カリフォルニア州選出)の訪台時以来8カ月ぶり。

 4月6日にはマイケル・マッコール下院外交委員長(共和、テキサス州選出)が超党派議員団を率いて台湾を訪問した。帰米直後の蔡英文氏と会談した。

 米共和党は、ドナルド・トランプ前大統領の訴追を決定したニューヨーク州マンハッタン地区のアルビン・ブラッグ検事(公選、民主党)を下院委員会に召喚し、訴因の経緯を徹底的に追及すると息巻いている。

 しかし、共和党は、こと台湾問題では民主党と完全に一致している。

 米国内に広がる反中国気運は、「台湾防衛」という具体的なスローガンとなって保守派、リベラル派の垣根を超えて票田に浸透している。

 連邦議員にとってはいわば「踏み絵」のようなもの。通常、外交問題はなかなか選挙の争点にならないが、「台湾」だけは違うからだ。

 蔡英文氏の訪米、下院議長との会談に、中国はペロシ訪台時と同じように軍事的威嚇で牽制した。

 会談直前、空母「山東」を中心とする艦隊を台湾沖の西太平洋に派遣した。中国海事局は台湾海峡に巡視船を出動させて、航行中の船舶を監視した。

 中国政府は、「国家主権と領土の一体性を守るため強力な措置を取る」(外務省報道官)、「高度な警戒態勢を維持する」(国防省報道官)と報道官レベルでの談話を出したが、必要以上の強硬な文言は控えている。

 折しもエマニュエル・マクロン仏大統領、欧州連合(EU)のウルズラ・フォンデアライエン委員長が相次いで北京を訪問。

 マクロン氏は習近平国家主席に対し、「台湾海峡の緊張化に強い懸念」を表明し、「現状維持」を強く求めたもようだ。

Emmanuel Macron Visits China: Stability in the Taiwan Strait Should be a Priority for France 

 習近平国家主席は4月6日、フォンデアライエン欧州委員長に対し、「台湾問題は中国の核心的利益中の核心だ。誰かが『一つの中国』問題で言い掛かりをつければ、中国政府と人民は絶対に許さない」とくぎを刺した。

 中国軍は2022年夏、当時のペロシ氏が台湾訪問を強行した際には、台湾を包囲する形で前例のない大規模な軍事演習を展開した。

 これまでのところ、そうした動きは確認されていない。