(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)
ドイツのオラフ・ショルツ首相は3月中旬の日本経済新聞とのインタビューで、国内で稼働している3基の原発(エムスラント、イザール2、ネッカーベストハイム2)について、4月初めにもそれらの稼働を停止すると答えた。アンゲラ・メルケル前首相時代から約12年の歳月を経て、ドイツは脱原発を実現することになる。
ドイツ政府は2022年末までに脱原発を実現する予定で、段階的に原発の廃炉を進めてきた。その結果、電源構成に占める原発の比率は、東日本大震災の翌年の2012年の15.9%から、2022年6月時点には6.0%へと低下していた(図表1)。ところが、ロシア産ガスの供給減を受け、ショルツ政権は稼働を半年間、延長させた経緯がある。
【図表1 ドイツの電源構成】
そもそもドイツ政府は「脱炭素」と「脱原発」の二兎を追う戦略を描いていた。そのために、再エネ発電の一段の普及を図るとともに、移行期間においてはガス火力発電を活用するという二段構えの戦術を用意していた。その火力発電に使う天然ガスの主な調達先は、ドイツと経済的な友好関係にあったロシアであった。
そのロシアが、2022年2月24日にウクライナに侵攻したことで、事態は急変した。欧州連合(EU)の執行部局である欧州委員会を中心に化石燃料の「脱ロシア化」が宣言され、EU各国がロシア産の化石燃料の利用の削減に努めることになったのだ。当初は慎重だったショルツ政権も、徐々に「脱ロシア化」を進めざるを得なくなった。
そして、ドイツは「脱炭素」と「脱原発」に加えて「脱ロシア」の三兎を追う戦略を進めた。再エネ発電の普及を進める一方、ガス火力発電に関してはロシア産の天然ガスの利用が難しくなったため、代替手段として第三国から液化天然ガス(LNG)を輸入する必要に迫られたのである。
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