(英エコノミスト誌 2023年3月11日号)

東アジアにも人々の自由を脅かそうとする権力欲に凝り固まった困り者がいる(写真は台北)

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超大国同士の紛争は世界を揺るがす。

 欧州は今、1945年以降で最もむごたらしい国家間の戦争を目の当たりにしているが、アジアでさらにひどい事態が生じる危険がある。

 台湾をめぐる米国と中国の紛争だ。

 緊張は高まっている。米軍は、中国のミサイル攻撃の威力を低下させるために考案された「武器分散」と呼ばれる新しいドクトリンに転じている。

 3月初めには、中国のジェット機数十機が台湾の「防空識別圏」に侵入した。

 その後、中国の外相は米国の戦略を「全面的な封じ込めと抑圧、生きるか死ぬかのゼロサムゲーム」と形容し、強く非難した。

台湾をめぐる米中の直接対決

 米国がアジアで軍備を強化し、同盟国を鼓舞するなかで、2つの疑問が浮上している。

 まず、米国は台湾防衛のために別の核大国と直接戦争するリスクを冒してもよいと思っているのか。これはウクライナについては用意がなかったことだ。

 そして、アジアで中国と軍事的に競うことにより、まさに米国が避けようとしている戦争そのものを誘発するのではないか、ということだ。

 台湾侵攻がどのように始まる可能性があるのか、確かなことは誰にも分からない。中国は「グレーゾーン」戦術を取る可能性がある。

 例えば、自治が行われている台湾島を封鎖して経済と士気を落ち込ませるために、威圧的だが完全な戦争行為には当たらない行動を取るかもしれない。

 あるいは、グアムと日本にある米軍基地にミサイルで先制攻撃を仕掛けて上陸作戦を展開しやすくする可能性もある。

 台湾は独力では数日か数週間しか攻撃に耐えられないため、どんな紛争でもひとたび始まってしまえば、あっという間に超大国同士の直接対決にエスカレートする恐れがある。