特に2018年の冬は、例年よりも早い2月にはすでに氷が溶け始め、5月には通常の1カ月以上も早く氷解していた。

 科学誌「サイエンス・アドバンシズ」はこの事態をこう記している。

「ベーリング海では少なくとも過去5500年間、2018年のような冬は訪れていない」

「世界が不可逆的な変化に直面しており、今世紀中にこの海を完全に氷のない状態にする可能性がある」

 特にズワイガニのように海底で生息している生物にとって、水温の変化は死活問題となる。

 というのも、海水は温度が下がると塩分濃度も下がるため生息している生物の浮力も低下する。

 浮力が少ない方がカニのように海底で生活する生物にとっては都合がいいのだが、水温が上がることで浮力がついて、カニの幼生などが海底にとどまれなくなり、他の海洋生物に捕食されるようになってしまう。

 冷たい海水の層は「コールドプール」と呼ばれ、ズワイガニにとっては安住の地といわれている。

 それが2018年以降、ベーリング海のコールドプールが不安定になってきているのだ。

 さらに海水温が上昇したことで、カニの新陳代謝が活発になり、餌が足りなくなっているとの説もある。