網の入り口は巨大で、環境保護活動家は「ジャンボジェット機が余裕で入る大きさ」と形容するほどのサイズだという。

 その網が海底の土砂をかき集めるように引きずられることで、昆布などが付いている礁が平らにされてしまう。

 米国科学アカデミーは「(トロール漁は)海底の生物的、物理的構造を除去、または損傷させてしまっている」と報告書に記している。

  アラスカ州の環境問題に詳しいジャーナリストのアダム・フェダーマン氏によると、トロール漁の船団は1回の操業で最大10時間、同じ場所を何度も引きずって漁を行うこともあり、自然環境に大きな影響を与えていることは間違いないという。

 しかも漁師たちの対象としていない魚類が網に入った時は海洋投棄されることが一般的なため、無駄の多い漁法ともいわれている。

 ベーリング海の漁業関係者はこれまで、オヒョウ、カニ、サケの稚魚を「メートル単位で投げ売ってきた」と言われるほど漁獲量には困っていなかった。

 だが、魚類の生息数が減ってきたことで、近年は海洋投棄の比率を減らすようになってきたとの報告もある。

 乱獲と同時に問題視されているのが気候変動である。

 前述したズワイガニの生息数の減少は、乱獲よりも気候変動による影響の方が多いとの指摘がある。

 というのも、温暖化の影響で海水温が高く、ベーリング海の氷が以前よりも少なくなってきているからだ。