3月6日午前、徴用工問題の解決案を会見で発表する韓国の林振外相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が6日、元徴用工賠償判決の解決策として「民間企業が拠出した財団基金が、最高裁で勝訴した原告側への賠償金を肩代わりして支給する」という政府の公式案を発表した。韓国政府が思い描いたように事が進めば、日韓関係は改善に向けて大きく進むことになるだろう。

 だが、この解決案に対して、被害者の一部からは「日本の賠償と謝罪が排除された解決策」という強い非難が提起されている。さらに野党からは「屈辱外交による惨事」で「撤回」を主張されるなど、2015年の日韓慰安婦合意直後に韓国社会を襲った当時の混乱が再現される兆しまで見られる。

あらかじめ予想されていた強い反発

「韓国の民間企業が行政安全部傘下の財団に資金を拠出し、そこから最高裁で賠償確定判決を受けた15人の被害者に賠償金と遅延利子を支給する。係争中の訴訟で原告側が賠償確定判決を受けた場合、彼らに対する賠償も基金から支払われる……」

 韓国政府が6日に発表した「第三者弁済」による解決案は、実は1月12日、外交部が主催した公式討論会で提案され、大きな反発を招いた内容と瓜二つだった。その意味では、最初から激しい反発が予想されていたとも言える。

 当時、市民団体「日帝強制動員市民の会」などの被害者団体と野党関係者は討論会に反発し出席しなかった。出席した被害者たちも、政府や専門家たちの説明があるたびに声を上げ、批判を続けた。