ロシアと対等な防衛パートナーに

 シンガポールの南洋理工大学ラジャラトム国際関係スクールのマイケル・ラスカ氏は、その中国が今、「ロシア防衛産業の比較的対等な産業パートナー」になるチャンスを手にしていると言う。

 中国はただ基本的なキットを送るのではなく、ドローンや巡航ミサイル、その他の精密兵器などで用いるハイテク部品を送ることで、ロシアが西側の制裁を回避するのを手助けできるかもしれない。

 ラスカ氏は、中国は見返りとして、宇宙ロケットの発射(潜在的には弾道ミサイル)に使われるロシア製エンジン「RD-180」の技術を求める可能性があると指摘する。

 潜水艦の技術やジェトエンジンも魅力的な見返りになるだろう。

 ただし、中国の指導部は意見が割れている。

 中国としては、ロシアが戦場で恥をかくところは見たくない。相手が米国のロケットランチャーや欧州の戦車であれば、特にそうだ。

中国側が自制する理由

 侵攻が始まるほんの数週間前に、ロシアと中国は自分たちの「限界なき」友情を祝っていた。

 中国政府のなかには、米国のエネルギーをインド太平洋から欧州にそらすことも好ましいと考える当局者がいるかもしれない。

 だが、中国には自制する理由がある。

 事情に通じた欧州当局者によれば、中国は武器売却に関する協議を米国側に察知・公表されたことでクレムリンに腹を立てている。

 中国側は、いかなる支援も秘密にしておきたかった。

 ロシアの作戦を財政的に支援すれば、中立の調停者のふりが台無しになることは中国も承知している。

 すでに、中国が2月24日に公表した偏りのある和平案は、ウクライナの支援国に退けられた。

 中国がロシアの作戦を支援すれば、米国との関係もさらに悪化し、欧州諸国の反感も買う。

 米国のリンダ・トーマスグリーンフィールド国連大使と欧州連合(EU)のジョセップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表は、殺傷兵器の支援は「レッドライン」を超えると警鐘を鳴らしている。