東日本大震災と福島第一原発事故の発生から、まもなく12年。復興はどの程度、進んだのだろうか。

 新型コロナウイルスに翻弄された東京オリンピックは当初、復興オリンピック・パラリンピックとして、スポーツの力が被災地に夢や希望をもたらすと世界に発信するため、招致されたはず。果たして、その役割は果たされたのか。

 コロナウイルスの急激な拡大で開催か、延期か、中止か、世論も大きく揺れ動き、そのことばかりに着目していたオリンピックだった気がする。

富岡の無人地帯にたったひとりで

 本来なら、福島から聖火ランナーが走り、華々しく開催される予定だった「復興五輪」。オリンピックに合わせて、「再建」が急ピッチで進められた。利用する人もほとんどいないのに、「帰還困難区域」に夜ノ森駅が再建された。その光景をじっと見つめる人がいた。

「これのどこが復興だ? 建物が新しくなっただけで、人が帰ってねえべ」

 原発事故による無人地帯となった福島県富岡町にたった一人で暮らしているナオトさん。『劇場版 ナオト、いまもひとりっきり』は2015年、全国公開されたドキュメンタリー『ナオトひとりっきり Alone in Fukushima』の続編である。