球春到来。今年の注目はワールドベースボールクラシックだ。

 大谷翔平、ダルビッシュ有らを擁し、過去最強のメンバーとうたわれる「栗山ジャパン」は覇権奪回を望めるのか――。

 メンバーの中で野手の軸として大きな役割を期待されるのがシカゴ・カブスの鈴木誠也だ。大谷翔平と同級生であり、国際舞台の経験も群を抜く。

 今オフの鈴木のトレーニングはすさまじかった。そこには「今年こそメジャーリーガーたちを見返したい」という強い思いがある。

 侍ジャパンのキーマンを全3回で紐解いていく第2回目。

メジャー1年目の快進撃に浮かれなかった理由

 鈴木誠也の「国際経験」は今メンバーの中でも貴重だ。

 金メダルを獲得した東京五輪(2021年)、優勝を果たしたプレミア12(2019年)、いずれも侍ジャパンの4番打者としてプレーし、前回のワールドベースボールクラシック(2017年)でも2試合に出場。

 今回の「最強メンバー」の中でWBCを経験したことがあるのは、第二回(2009年)に出場したダルビッシュ有、そして2017年大会の松井裕樹(東北楽天)、山田哲人(ヤクルト)そして鈴木誠也のみとなる。

 昨シーズンのメジャー移籍で、多くのメジャーリーガーの情報も頭に入れた。中心バッターとしてだけでなく、チームのなかでも大きな役割を担うことになるだろう。

 鈴木にとってこれまでの「国際大会」はいつだって大きな刺激となっていた。

 鈴木はよく「納得がいかない」という趣旨の言葉を使う。

「3割」の成功が一流の証明であるバッティングは、逆から見れば7割は失敗だ。鈴木誠也にとっては「悪い」――「納得がいかない」と話すことが増えるのは理解できる。

 しかし、鈴木は素晴らしいホームランを打ったとしても「納得がいっていない」「たまたまです」と話すことが多い。逆に結果が出ていない打席をポジティブに語ることもある。

 ここにこそ、鈴木誠也のすごさが隠されている。

「納得がいっていない」。それは、自分の中ではっきりと目指す目標があり、それに向かって「良し」「悪し」の判断ができている、ということだ。

 結果が出ていても目標に向かっている道中で役に立たないアイテムであれば「悪い」し、結果が出なくても役立つアイテムであれば「良い」。

 鈴木はそれをはっきりと自覚することができる。感覚的に「良い」「悪い」を判断するのではなく、具体的に「どこが納得いっていないのか」がわかっているのだ。

 昨シーズン、メジャーデビューにおいて鈴木はセンセーショナルな活躍を続けた。6試合で打率.412、3本塁打。週間MVPも獲得した。

 けれどこのときから鈴木はずっと「納得がいっていない」を繰り返していた。

「多くの人が、いい感じだねと言ってくれていましたけど、自分の中では全然、そんなことはなくて。むしろ良くねえし、って(笑)。手を出していたら凡打になっていただろう(見逃した)球が、ボール球になってフォアボールが増えて率が残っているように見えただけですよね」