経済的・軍事的に強大となる中国に対しどう対抗するか。前回の記事「強大化する中国、日本は最強の対抗手段である半導体規制で米国と連携せよ」では、米国が強化する半導体規制から、対中デカップリングと日本のとるべき道を検討した。後編となる今回は、太陽光・風力・電気自動車などのグリーン分野で深まる対中依存の現状と、日本の競争力回復について考える。
◎前回の記事から読む
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/73761
(杉山大志:キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)
不透明で予測不可能になった中国の意思決定
中国で文化大革命が終わると日本は対中ODA(政府開発援助)を始め、中国が改革・開放路線に転じると投資・貿易を積極的に拡大してきた。これは中国の経済成長におおいに寄与した。
米国も中国の経済成長を歓迎していた。経済相互依存が高まることは、戦争の抑止になると考えられた。また豊かになれば、中国も自由・民主といった普遍的価値をいずれ共有するようになる、という期待があった。
いま中国は日本の第1の貿易相手国になったが、これは、もともとは善意に始まったものであった。そして多くの企業が、苦労して市場を開拓し、事業を立ち上げてきた。いまそれがようやく実って収益を上げるようになった。
だが他方で、中国の政治体制は期待を大きく裏切ることになった。
今日、日本・米国が対峙しているのは、共産党独裁体制のまま、ますます強くなる中国である。のみならず、習近平国家主席は2022年の共産党大会で独裁体制を強化し、ますます中国の意思決定は不透明で予測不可能になった。
国益を合理的に考えればありえない台湾への軍事侵攻も、習近平独裁体制ならばありうるかもしれない。独裁体制の危うさは、まさにウクライナ戦争でロシアのプーチン大統領が実証したことだ。