美齊津さんは防大卒業後、実業団のアメリカンフットボール選手として活躍し日本一になった。現在、ケアマネジャーをしている。

まだ母らしさが残っているのではないか

 認知症の心配は家族がなることの心配と、自分がなることの心配がある。美齊津さんの場合は母親だった。もうひとり、母親が認知症になったことを心配している人のことをテレビで見た。NHKスペシャル「認知症の母と脳科学者の私」という番組である(2023年1月7日)。

 脳科学者の恩蔵絢子(おんぞうあやこ)氏の母恵子さんは、65歳のときアルツハイマー型認知症になった。元気なころは「なんでもやってあげるよ」が口癖だったが、いまでは自分の名前も誕生日もわからなくなっている。自宅で40年以上音楽教室を開いていた。元気だった頃の恵子さんが歌う場面が流れる。

 2022年11月、恵子さんは72歳の誕生日を迎えた。番組はそれ以降の恵子さんと夫と娘の日々を追っているが、絢子さんは恵子さんにまだ母らしさが残っているのではないかと考え、母から反応を引き出そうとする。

 まだ娘の名前は憶えているようだ。だが自分の状態を恥じているようにも思え、しきりに「わからない、バカだから」という。新しいことにも興味がなく、反応は薄い。しかし終始穏やかな表情である。

 自分の名前が思い出せないということはどういうことだろう。わたしは最近、数秒前にしようとしていたことをよく忘れる。あれ? なにを検索しようとしてたのかな、というように。認知症とは、この「なにを検索……」までも忘れてしまうということなのか。ともあれ、番組が終わっても恩蔵家の日々はつづくのである。

はたして早期発見したほうがいいのか

 なにかに関心をもっていると、それに関連することがつづくことがある。

 今度は当人が認知症になった場合の事例を知ることになった。「43歳で認知症 絶望はしない」という、毎日新聞の1面トップに載った記事である(2023年1月22日)。当事者は東京都八王子市で「おれんじドアはちおうじ」という団体を主催するさとうみきさんである。現在47歳。

 彼女が認知症に気づいたのは、あるテレビドラマで、約束事を忘れたり、おなじものを2度買ったりする女性が認知症と診断される場面を見て、自分もそれに当てはまると心配になって検査を受けた結果、若年性アルツハイマー型認知症だとわかったのだという。