「もっと稽古して謙虚にやっていく」

 ちなみに今場所は休場した照ノ富士が番付上で「横綱大関」とされた。春場所後に貴景勝が最高位を手中に収めれば、その次の5月場所では大関が1人もおらず不在となり、番付も照ノ富士と揃って「横綱大関」と記されることになる。1981年の9月場所以来、3度目の大関不在が現実化する流れになるが、そんなことは貴景勝にとってどうだっていい。

 かつて突き押し相撲のみで横綱の地位にまで上がった力士はいないが、進化した貴景勝ならば「夢」を実現できる力がある。相撲を本格的に始めたばかりの小学校低学年の時に早々と「横綱になりたい」と将来の夢を語っていた。

2011年8月、後に「貴景勝」となる報徳学園中時代の佐藤貴信選手。この全国中学校相撲選手権大会で優勝し、中学生横綱となった(写真:アフロスポーツ)

 23日に千秋楽から一夜明けた貴景勝はメディアへのオンライン会見では、地元兵庫に近い大阪エディオンアリーナで行われる次の春場所に向けて「もっと稽古して謙虚にやっていく。周りで支えてくれるみんなの夢も背負って頑張りたい」と自らにも言い聞かせつつ、言葉に力を込めた。

 千載一遇の好機をつかみ取れるか。26歳の若い小兵力士が努力を重ねた末に相撲界の頂点へ到達しようとしている。