韓国政府が開催した徴用工問題を巡る公開討論会(2023年1月12日、写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(平井 敏晴:韓国・漢陽女子大学助教授)

 どうしてこうも、先を急いでしまうのか。韓国には「懲りる」という言葉がないのだろうか。

 韓国外交部は1月12日、徴用工問題を巡る公開討論会で解決案を公表し説明した。

 戦時中に日本に徴用された労働者やその遺族たちが複数の日本企業を相手に訴訟を起こし、日本の最高裁にあたる韓国大法院は被告に対して賠償を命じた。これに伴い、被告となっている日本企業の韓国資産が差し押さえられ、その現金化の期限が迫っている。もしも現金化が行われれば、戦後補償について「完全かつ最終的に解決した」として1965年に結ばれた日韓請求権協定を事実上破棄することになる。日韓関係は修復不可能になると言ってよいだろう。

 韓国の大学で日本について講義している身としては、もちろん日韓関係の改善を願っているし、協力することにやぶさかではない。だが、韓国・尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権のそうした動きは、諸手を挙げて歓迎することはできない。どうしても警戒心が付きまとってしまうのだ。