シューターを使った脱出ではほぼ必ず負傷者が出る

 このように、地上の支援体制が整っていれば、シューターを使った脱出は必要ないのである。

 過去に我が国でも多くのシューターを使った緊急脱出を経験しているが、100%近くのケースで多くの重軽傷者を出している。

 シューターから体が離れた時に、コンクリートの地面に腰を打ち付けたり、シューターに添えた手が摩擦でやけどを負ったりする、である。

 私の手元には、多くの記録が残されているが、ジャンボジェットクラスの航空機では、成田からフランクフルト行きの便が離陸中のトラブル発生で滑走を中断して緊急脱出したケースがあり、30名弱が重軽傷を負った。

 米国の航空会社でも、ゲートを離れた直後にCAが誤ってエンジン火災と機長に報告したために脱出となり、多数の重軽傷者を発生させるなどしている。

 小型機・中型機を含めても、1人もけがをしなかった例はほとんどない。

2010年8月、米国のサクラメント国際空港(カリフォルニア州)でタイヤが破裂し、脱出シューターで避難した米ジェットブルーの事故でも負傷者が発生した(写真:ZUMA Press/アフロ)